新世代ブラジル代表とスター候補たち(アタッカー編)

若手の成長を駆け出しのころから愉(たの)しむこと。
これこそサッカーファンにとって至高の愉しみ方。
とりわけその素材が極上であるほど、その愉しみもまた増すことになる。


南アフリカワールドカップでは見事にコケてしまったブラジル代表。
守備的(堅実)なサッカーと、フェリペ・メロのような技術的に凡庸な選手に固執するあまり、自滅してしまったとされる。当然、もとより不人気だったメロ(コンフェデ後は評価が上がったが)を使い続けたドゥンガに対する批判は凄まじい。


しかし、言われているほどブラジル代表は悪くなかったと思う。選手の特性に合ったサッカー(カウンターサッカー)を徹底したオランダ代表は今大会最高のチームだったのであり負けたのは仕方がない面がある。ブラジル代表自体は2006年より強かった、というのが俺の見方。

苦労して機能する組織を築きあげて勝ち進んでも、敗退した途端に国賊扱いされるのだから、ブラジル代表の監督は割に合わない。優勝以外は認めてもらえない。今大会のベスト8では(ブラジルの基準では)勝ち進んだ内ににも入らないが、仮に準優勝でもやはり批判されるのがブラジルという国なんだろう。

そして次は自国ブラジルでのW杯。優勝は至上命令となる。新監督はマノ・メネーゼス(マノはポルトガル語で「兄貴」を意味するらしい。)。ブラジルにあっては守備的サッカーを好むとされる南部出身だが、さすがにドゥンガよりは攻撃的なサッカーを志向する。

そんなブラジル代表だが、未来には大きな希望がある。今まで以上に素晴らしい若手選手たちが続々と出てきている。まったく、ブラジルという国はことサッカーと総合格闘技においてはケタ違いだw

ブラジルが量産する若手選手の質と量には、我が世の春を謳歌するスペインですら、遠く及ばない。ここで近未来のフォリクラッセとなるであろうアタッカンテについて、個人的な印象を述べてみたい。

 
様変わりした布陣


ボランチのラミレスの起用は南アフリカW杯での活躍から予想できた。しかし誰がルーカスの起用を予想できただろうか?

4-2-3-1の「3-1」にあたるアタッカンテの起用はより大胆となった。ここに見えるのは“若手重視”の哲学に他ならない。なにしろ、パト、ネイマール、ガンソがスタメン起用されたのだ。「3-1」の4人の内の3人が入れ替わった新生セレソン。形ばかりの“新装開店”で客から巻き上げるそこいらのボッタクリ・パチ屋とは違う、正真正銘の「グランド・オープン」の雰囲気がここにはある。
メンツも戦い方も何もかもがリニューアルされた感じだね。

まさに若手の大判振舞。このテの若いチームはファンには最高の愉しみ。海外サッカーファンはいつの世も“若手萌え”なのだ。


   コウチーニョ

フェリペ・コウチーニョ 生年1992年6月12日 インテル・ミラノ所属

フットサルの盛んなブラジルでは早くから神童と見なされてきた。ブラジル若手時代の評価はあのパトをも上回る。

トップ下を主戦場とするが、インテルにはカウンタサッカーにおける希代のトップ下であるスナイデル(26才)がいる。イタリアサッカー(カウンターサッカー)に最高の適性を持つスナイデルに勝つのはあまりに厳しい。

フットサル時代、ヴァスコダガマ時代にたびたび見せてきた左サイドから切り込む動きを磨き左ウィング(あるいはシャドー)として活路を見出すべきだろう。足裏の上手さなどは本場フットサル仕込みであり、ロナウジーニョ級。期待度はハンパじゃなくデカい。

しかし、残念ながらこの試合では出番ナシ。今後どういう使われ方をするか見物だね(後述するガンソとのポジション争いも)。





ガンソ(画像は左。生年1989年10月12日)&ネイマール(画像は右。生年1992年2月5日)の"サントスコンビ”

いずれもメネーゼス監督が先発で用いた選手。ネイマールはストライカーという触れ込みだったが、見れば見るほどドリブラーとしての質の高さが目につく。ヨーロッパでやるなら4-2-3-1のウィング(3の両翼)にハマりそうだという印象を受ける。得点力の高いブラジルのウィンガーとなるとロビーニョがまず浮かぶ。

そういえば、髪型と目つきがDQNに見えるw DQN系の選手は20代半ばで期待を背負いながら一度沈み、また浮上するという逆・放物線のサイクルを送りがちだが果たして・・・(髪型だけで判断しちゃいけないのだが)。

 
アヒル口がAKBの“ともチン”の如くかわいらしいガンソは、コウチーニョよりもよりトップ下らしいトップ下だという印象。足もとでボールをつなぐことを好み、下がり目の位置からの組み立てにも積極的に参加する古典的なトップ下に見えた。

ガンソはコウチーニョとトップ下のレギュラーを争う宿命にあるかもしれない。コウチーニョが左ウィングと覚醒したとしても、そこにはロビーニョがいる。コウチーニョとしてはロビーニョよりはガンソの方が、ポジション争いの相手としては組みしやすいだろうね。


パト 

アレッシャンドレ・パト 生年1989年9月2日 ACミラン所属

先日21才になったばかりで、ガンソとは同年の生まれだが、このメンツに加わるとすでに横綱の風格が漂う。思い返してみれば、パトのセリエAデビュー戦は衝撃的だった。初戦から見せた柔らかいボールタッチと裏への抜けだし・・パトは喩えるなら、パスとボールタッチが上手いインザーギか。

しかし、サイドに回るとたちまちロビーニョばりの超一流ウィンガーとなる(個人的にはミランのポジションである右よりも左の方がパトの適性に合うと思う)。怪我がちなのが唯一の難点であるが、現時点では完全にネクストレベルにある。

  これだけの若手アタッカンテたちに加えてロビーニョもいる。ロビーニョは4年後に30才となる。年齢的に考えれば、今季からブラジルW杯ぐらいまでがロビーニョの全盛期になるだろう(DQNな性質も落ち着くお年ごろ)。今季のミランではロナウジーニョとのポジション争いが厳しいが、ロナウジーニョが高齢なため、いずれスタメンに定着すると思われる。

ガンソ・ネイマールに関してはヨーロッパのどのクラブに行くのかも注目ポイントとなっている。ガンソには是非とも、セリエのクラブに来てもらいたいものだが。

じん帯断裂で故障中の今こそ安値獲得のチャンスと思うのだが・・・ベルルスコーニ首相とミニミーGM(副会長)はいかがお考えだろうか?


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